古事記の謎(1) ~常識で考える日本古代史39
3.1 古事記の書かれた背景
魏志倭人伝と邪馬台国が3世紀の出来事であることは間違いないが、そこから8世紀初め、710年に奈良・平城京ができるまでの約500年間、日本列島で何が起こったのかは実のところよく分かっていない。
その最大の理由は中国側の史書と日本側のそれとが一致していないということであるが、それだけでなく、日本側の史料同士でも食い違う点が多い。一応、大和朝廷の正式な国史は「日本書紀」ということになっているが、ここに書かれていることは必ずしも「裏が取れる」事実ばかりではない。
その意味で、日本書紀に先立つわが国最古の歴史書である「古事記」を再検討することは重要である。実際、「古事記」をオリジナルとして内容を整理・拡充したのが日本書紀であることは、両書を読めばほぼ確実であると思われるのである。
江戸時代に入るまで古事記は日本書紀ほどにはきちんと管理されていなかったことから、日本書紀をもとに古事記が後の時代に作られたという「古事記偽書(にせもの)説」もあることも確かである。
ただ、日本書紀自体つじつまの合わない点があるのに、よりつじつまの合わないものを後の時代に作るという意図はよく分からず、その点からみると古事記の方が時間的には先に作られたと考えるのが妥当ではないかと思われる。したがって、古事記はその最初の部分に書かれている経緯により作成された、ということで話を進めたい。
それによると、「飛鳥清原大宮で天下を治められた天皇」(天武天皇)が、各家に残されているわが国に関する古い記録には誤りや不一致が多いので、きちんと整理して後世に伝えようとされたのが発端、ということになっている。
その際、各家の記録を暗記した担当者が稗田阿礼(ひえだのあれ)である。ところがその後天皇の代替わりにより、記録を整理し文書として残す作業は行われなかったという。それが和銅五年に至り、当代の「皇帝陛下」(元明天皇)の命により、太安万呂(おおのやすまろ)が古事記として完成した、とある。
さて、以上の内容を時系列で整理すると以下のようになる。天武天皇在位は672年から686年、この時代に古事記の編集作業が始まり、和銅五年、712年に完成した。その間には、飛鳥浄御原宮から藤原京、さらに平城京という首都移転プロジェクトがあり、飛鳥浄御原令(あすかきよみはらりょう)、大宝律令という憲法制定プロジェクトがあった。
他にも、内政面では地方管理体制の強化、外交面では白村江の敗戦処理などの懸案事項が目白押しで、とても歴史書の編集にマンパワーを割ける状況ではなかったということは理解できる。
だから、古事記に書かれている内容は710年時点でなく680年を基準とした「歴史」のことであるのは仕方がない。同時代のことは「歴史」ではないので、その五十年前、あるいは百年前までのことが書かれているというのが普通であろう。
そして、古事記下巻は豊御食炊屋比売命(とよみけかしきやひめのみこと・推古天皇)で終わっている。推古天皇在位は593年から628年とされているので、まさに680年からみて50~100年前ということになる。
ところが、推古天皇の記事は都のあった場所と、在位年数と、陵墓の位置だけのほぼ2、3行であり、推古天皇から前の何代かの天皇についても同様である。実質的に記事があるのは、10代前の顕宗(けんぞう)天皇までさかのぼらなければならない。(この項続く)
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コメント
今回は解りやすく読み仮名がついており
全部読めました(^○^)サンクス!ティーチャー!!
内容も何となく言いたいことは理解出来ました。
※先程、うちの息子は岡山の造山古墳に遠足に行きました。
ナイスタイミングにTパ先生が記事にして下さっていたので、昨夜は、私の知ったかぶりを炸裂させました。
投稿 びびり姫 | 2008/05/02 08:26
>> びびり姫さま
コメントありがとうございます。造山古墳ですか。いいですね。
造山古墳は全国第4位の大きさがありますが、上の3つが宮内庁管理(仁徳天皇陵、応神天皇陵、履中天皇陵)なので、地主さんが許せば近くに行くことのできる一番大きな古墳ということになりますね。
こういう大きなものをどんなふうに作ったのか考えると、日々の暮らしのことも忘れて雄大な気持ちになります。一方で作らされた人たちにとっては、かなりつらい仕事だったのか、あるいはお手当てがもらえて楽しいお仕事だったのか、想像すると楽しくなります。
古事記編も長くなりそうですが、ぜひお付き合いくださいますようお願いいたします。ではでは。
投稿 TAIPA | 2008/05/02 16:33